6.発題③


「ウクライナ戦争の完全な終焉を祈る」


安達 正敏
プロフィール
1951年生まれ。知的障碍者ホーム勤務中。20代前半は、独立学園高校に勤務。浜松衛生短大看護学科卒業後は、65歳まで3か所の病院と障害者ホームで勤務。20代後半より7年間、伊藤塾塾生。30代後半から5年間カペナント・セミナリー(聖契神学校)に在学。インドで半年間ボランティア活動をする。

誰にも語れない体験
 こんにちは。初めまして!安達正敏と申します。今日は私の信仰のことと、ウクライナ戦争のお話しをさせて頂きます。
 私は独立学園高校に3年間(1973~76)準職員として滞在中に、キリスト教の基礎を学ぶことが出来ました。それから十数年して、看護師として勤務していた病院の夜勤明けの申し送り中に、突然呼吸困難になりました。パニック障害だったと思います。バスや電車に長時間、乗れなくなりました。
 12月に静養のため、浜名湖の北方の温泉に数泊しました。過労でした。精神的にはうつ状態でした。ある日の午後、裏山の林の中を散歩して、木々の葉の間からもれてくる太陽の光を見て祈っていると、「おまえの罪は赦された。もう二度と罪を犯すな」という神様の声を聞きました。
 その後、東京に帰る電車の中で、太陽光線が顔にあたり、同時に「私はおまえのために死んだ」「私はおまえを愛する」というイエス様の声を聞きました。それから心に平安と希望が与えられ、この病は癒される、これからもやって行けるし生きていけるとの思いがわいてきました。1990年12月の、39才直前の重要な聖霊体験であったと思います。

ロシア側の視点となった理由
 私は1974年秋の郡山市での講演(高橋三郎先生のノーベル賞作家の「クレムリンへの手紙」をテキストにした講演)からアレクサンドル・ソルジェニーツィンとソ連に関心を持ち、1975年8月にシベリア地方を、13日間見てきました。その後、今まで28年間、ロシア人一家と交流して、短期間ですが、7回ロシアを訪問し、混迷状態のロシアがしだいに安定してくるまで見てきました。
 今日は、欧米、西側とは別の視点からウクライナ戦争の話をさせて頂きます。

キリスト教の東西分裂
 ここから話がグーンと飛びます。キリスト教が東西に分裂(1054年)した原因は、フィリオ・クエであったと言われています。父「および子よりも」(フィリオ・クエ)聖霊が発出すると西側が附加したことで、東側はこれは耐えがたいことだと、分裂に至った様なのです。その後20世紀に至るまで約千年間交流がとだえてしまい、ようやく東西の交流が再開して、はじめて東方教会の教理が西側に分かるようになってきた。西方の救いのポイントは罪の赦しですが、東方の救いのポイントは神化の教理です。これをプロテスタントは、ほとんど知らないのです。
 西方教会と東方教会(ロシア正教)の強調点に違いが有ります。西は罪からの救いを、東は死からの救いを強調したのです。 次にウクライナ戦争について語らせて頂きます。ウクライナの西部はカソリック教会系のユニエイト教会で、東部は正教だと思います。
 私には、一面この戦争は西方と東方のキリスト教の戦いではないのかとの思いがわいてきます。1億4千万人の人口の内の数千万人のロシア人がロシア正教徒なのです。

ウクライナの戦争の原因
 1.アメリカによるウクライナのNATO化の恐れへのロシア側の身の凍るような不安感。
 2.ウクライナ政権による、ロシア語話者たちへの民族浄化的軍事弾圧。
  トッドの本の中にあるが、ジョン・ミアシャイマー氏(国際政治学者、シカゴ大学教授)は「ロシアの 攻撃が始まる以前から、ウクライナはすでにNATOの事実上の加盟国だった」と述べている(トッド、 2022、p22)。また「アメリカとイギリスが高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団を派遣して、ウ クライナを武装化していた」と。オバマ政権では送らなかったが、トランプ大統領は2018年から対 戦車用のジャベリンを輸出した。

戦争の目的
 1.この戦争はロシアと米英NATOとの戦争である。
 2.プーチン大統領の抹殺が目的である。
  (プーチン大統領を排除し、ロシアのプーチン体制を解体すること。)
 3.ロシアをグローバル自由主義経済に変えることが目的である。
  その結果、西欧(アメリカ)は敗北に直面している。もう昨年あたりからの結論となっている。プーチン大統領を失脚させる⇒ロシア政権に親欧政権を樹立させる⇒ロシアを民主化する⇒欧米から の民営化を要求する(IMF(国際通貨基金)の支援を受けると、融資の見返りに緊縮財政と大幅な民 営化を要求される)⇒その結果ロシア経済がグローバル市場に飲み込まれて行く、という計画に失 敗した。

ソ連崩壊後のアメリカの対口戦略
 1.ロシアの解体:「冷戦終結後、アメリカはロシア問題に関して、二つの戦略を持っていました。 第一はロシアの解体です。」(トッド、2022 p71~73)
 2.第二は冷戦から受け継いだ対立構造を、できるだけ長く保持して、アメリカとロシアの緊張を一定程 度維持することにより、ヨーロッパとロシアの接近を阻止すること」(トッド、2022、P71)。
 この戦略はアメリカの高名な政治学者で、ユダヤ系ポーランド出身のスビグネフ・ブレジンスキー(元カーター大統領の補佐官や、オバマ大統領のアドバイザー的働きをしていた方)の本の思想が、 米国外交問題評議会に影響を与えていると思われる。アメリカの外交政策は、外交問題評議会で政策を決定する。 だから、プーチン体制の解体が戦争の目的である。 具体的にロシアを五つに分割することを考えている。だからロシアの解体となる。
 エリツィン政権(1991~1999)後のプーチンの反グローバリズムのロシアをグローバル化させる(グローバル市場に組み込む)とは、 プーチン大統領がグローバル化に抵抗しているからだ。それは1991年ソ連崩壊後の約10年間、アメリカがハーバード大学の経済学者の指導によりIMFによる、 急速な民営化一本やりのやり方でロシアを経済破綻させたからだ。ハイパーインフレーションによりインフレ率が80倍になった。 紙幣は紙くずとなり、自殺、殺人、犯罪の増加で、男性の平均寿命が10年前より1994年には7歳短縮した。 ロシアは大変な目に遭った為、アメリカを信用しなくなった。エリツィン大統領はアルコール依存症であり、欧米には好かれたが、無能だったという。エリツィン大統領の時代に米国やイスラエルはロシアを支配できたようである。欧米はそのような体制を再現させたいと考えている。だから強行なNATOの東方拡大は、ロシア人の不安の大元である。不安感の強いプーチン大統領にとってNATO軍がロシア国境に迫り、ミサイル基地を作ることは耐えられない。もしアメリカとメキシコ国境にロシア軍が迫り、ミサイル基地を作ったら、アメリカはロシアと同じことをするだろう。

私のロシア・ウクライナ体験
 1.1986年、オーストラリア、アデレード。日本食レストランで語学学校に通いながら、6か月間働く。 日本人オーナーの夫がウクライナ人移民で親しくなり、ウクライナ正教会の礼拝に参加した。多数 のウクライナ系の移民の人々の痛烈な反ロシア感情を見た。どのポスターを持って行ってもよいと いうので、僕が選択したポスターだと、これはダメ!と言われるのであった(教会の女性たちからだ)。 ロシアへの嫌悪感の激しさを見た。
 2.1994年、ある知人のロシア人女性(当時25歳)の父親が路上で倒れており、重症との報告が入った。 最初の発見者にやっと家族の連絡先を伝えられたが、その後意識が戻らぬまま3か月後に亡くなった。 彼女は、父は殺害されたのだという。母親(父の妻)は「事故だったのよ」と違うことを言い、取り繕 う。殺人とは言わなかった。当時のサンクトペテルブルグはそんな状況であったのであろう。
 3.夏にロシア政府が債務不履行に陥り、ルーブルが暴落し経済破綻状態の1998年10月、サンクト・ペ テルブルクに行った。ある夜、「今のロシアは、アフリカのどこか戦争中の小国のようです」 と不安な表情で通訳の女性が語ったのを忘れられない。

2014年から2022年までの間の惨劇
 1.2014年2月18~19日、マイダン・クーデターで、極右のウクライナ人ネオナチ思想のスホボダやラ イトセクター派により、親ロシア政権を転覆したクーデターが起こりましたが、約100人のデモ参加 者が射殺されている。スホボダなどの占拠したビルに隠れていたスナイパーが銃でねらい射殺した と言われています。そして身の危険を感じた大統領は逃げ出している。そのクーデターの裏には、 当時のオバマ政権の担当者が深くかかわっていた。このクーデターをオリバー・ストーン監督の作 品が、ドキュメンタリーとして生々しい映像が見られる(「ウクライナ・オン・ファイヤ」2016)。 必見の映画なのではないかと思われる。
 2.ウクライナ東部ドンバス地方における8年間(2014~2022)に及ぶジェノサイト。フランス人女性アン ヌ・ロール・ボネルによるドキュメンタリー映画「ドンバス2016」が参考になるので、ぜひ見てほ しい。約1万4千人のドンバスの人々が、この地で殺害されたと言われている。ヌドンバスの100万 人の高齢者が、ウクライナ政府からの年金支給停止となった。それは年金以外に現金収人のない高 令者には死活問題であった。幸いにロシアからのパンを買える程度のわずかの年金支給があり、な んとか生きのびることが出来た。この情報はフランス陸軍予備将校のブノワ・バレ氏の動画で語ら れている。(参考文献5)
 3.キエフ郊外、プチャの大虐殺(2022年4月3日頃)。これはロシア側が実行したものでなく、「実はウ クライナ保安庁(SBU)と英国のM16が、事前に計画して行った」と言われている。(ウクライナの 元社会党のリーダーで、最高議会議員のイリヤ・キウァ氏の発言)「彼らは、あの日(4月3日)の早朝 に現地に到着し、エリアを隔離して死体を置いた」と言っている。この大虐殺ではロシア支持住民 が殺害されており、ウクライナ側による芝居だったと考えられます。「ゼレンスキー政権は、ます ます敵への憎しみを掻き立てるために、平気でウソをつき、ウクライナ戦争に関しては、西側メデ ィアが発信する仕組まれたフェイク、意図的な虚報、事実の確認しようのないニュースに、くれぐ れも注意が必要です」と、安斎育郎氏は語っている(安斎育郎、『ウクライナ戦争論』P.34~40)。 なお他にも色々の証拠をあげています。この虐殺報道はロシアは悪、ウクライナは善という思考を強 化した、大転換点となったと私は思う。

ロシアの「軍事侵攻」ではなく、別の視点から見ると、「人道的介入」という見方も有る
 福島原発被害者支援活動家で伝言館館長・安斎育郎氏は人道的介入という視点から再考する必要があると言う。ロシアは国連がドンバスの人々を保護する責任をとることを主張したが、国連安保理事会は米、英、仏の常任理事国の拒否権もあり、責任を果たさなかったと言っている。 (安斎、『ウクライナ戦争論』P.92~94)

ウクライナ戦争はアメリカに原因がある
 今回、ロシアは欧米・NATO諸国から、先に軍事侵攻した「ロシアが悪い」のだと袋叩きにあい2022年の経済制裁ではSWIFT(国際、銀行間通信協会)から排除されました。その為、国際送金とドル取引に色々と支障が大きくなりました。ところが、このデメリットをメリットに転換したように見えるのが、BRICSの結束を強め、少しずつ大きな勢力にしていることだと思います。
 22年の当初、これでロシア経済は終りだな、との予想に反して、ロシア経済は破綻しませんでした。悪化しましたが、少ししてもち直しました。
 アメリカは常に戦争や軍事介入をくり返してきました。それは戦争で間ちがいを犯しても、大きな島国のような存在で、脅威となる隣国もない、アメリカが侵攻されるリスクがないからです。どんな失敗をしても、生き延びられてしまう。「だから間ちがいをくり返すのです」(トッド、『第三次…』P83)とトッドは書いています。
 何度も何度も我々はきいたことですが、アメリカは人類史上初めて1945年8月6日に広島と、9日には長崎に原爆を投下し、大量殺戮をおこないました。その5か月前の3月10日には、東京大空襲にて、焼夷弾で爆撃して、一晩で約10万人位の、多くは一般市民を大量殺戮しています。これはジェノサイトです。
 1945年以降も、アメリカは10~15年くらいに1回戦争で介入し、そんなことをくり返してきました。全ての相手国は、自分よりも遥かに弱小国でした。まるで戦争しないと生きられない様に見えます。太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、コソボ空爆、アフガン戦争、イラク戦争、ウクライナ戦争などで世界を戦争にまき込み、例えばイラクでは一般市民を含む、何十万人を殺戮してきたのです。
 またジェフリー・サックス氏は、ユーチューブ動画で「アメリカのCIA主導により、秘密に政権転覆作戦を1947年から1989年までの42年間に70回おこない、その内6回は公然の政権転覆作戦で、つまり他国政府を転覆させるために公然たる戦争です。残りの64回は秘密に行なわれた。」(資料:リンジー・オルーク『秘密政府転覆』Covert Regime Change America's Secret Cold War.2018年)著者はボストン・カレッジ准教授。(参考:2025.9月発信、「トランプがウクライナ戦争を終わらせることができない理由」)と語っています。

平和構築を思考する
 ここで私がふと思うことは(たぶん誰でも思うことだと思いますが)、それならばアメリカという覇権国が弱くなれば(なくなれば)、世界は今よりも、もっと平和になるのではないかということです。これは誰もが思いつくのではないでしょうか。1991年以降、34年間、米国の単独覇権体制が続きました。そこから多極化に移行させたいというのが、多くの人々の強い願望であったことでしょう。
 米ドルの国際基軸通貨体制によるアメリカの軍事・経済支配体制の終焉を願いたい。出来るかぎり戦争がおこらないシステムを思考したい。

<参考文献>
1.『安斎育郎のウクライナ戦争論』
  (改訂第11版)P.34~40.安斎育郎,安斎科学・平和事務所発行、2024.
2.『ウクライナ・オン・ファイヤ』2016(ドキュメンタリー映画)、オリバー・ストーン監督
3.『コールダー・ウォー』マリン・カッサ、2022.草思社
4.『第三次世界大戦はもう始まっている』
  エマニュエル・トッド2022、文春新書(P83,60,84,145,192)
5.『ドンバスでのOSCE(欧州安全保障協力機構)監視員がウクライナ戦争のウソを暴露』
  2025年8月31日配信。ブノワ・バレ(フランス陸軍予備役将校)。
6.『ドンバス2016』(ドキュメンタリー映画)、アンヌ・ロール・ボネル