11.閉会挨拶 無教会全国集会準備委員会 副議長 小舘 美彦 ![]() ところがです。ところが、非常に悲しいことに、私の周りにはこの「驚きの感覚」を持っている人がほとんどいません。ほとんどの人は、何もかも知っている知識の人であり、何かに驚くということを知らない人なのです。先年、私は全長二メートルに近いエイを釣りあげました。釣りあげるのに一時間近くかかりました。私はあまりに驚いたので、その話を周囲の人に何度もしたのですが、驚くべきことに、驚いた人はほとんどいない。ほとんどの人が、その体験を知的に解釈しようとしたのです。これでは、心のコミュニケーションが全く成り立ちません。ところが、こういうことは二度や三度ではないのです。私がいくら他の驚きの体験を話してもほとんどの人は話に乗ってこない。まるで驚いたら負けであるかのように、ほとんどの人は、そのようなことはすでに知っていると言わんばかりの応答をするのです。私はがっかりして、最近では人と話をするのが嫌になっているくらいです。 いったいなぜこうなるのでしょうか。一つは日本の教育方針が知識偏重だったからでしょう。日本はあまりに知識を伸ばす教育を重視し過ぎ、驚くということを軽視してきた。むしろ驚くことの芽を摘み取ってきた。受験戦争はその方向を決定づける出来事であったと思われます。もう一つの原因は、ネットやスマホの普及です。現代人は自分で体験する前に、ほとんどのことをネットやスマホで知ってしまう。だから、実体験を通じて驚くという感覚が失われてしまっている。ほとんどの人が、スマホで見たことを確認するために現地に赴いて体験するのです。これでは「驚きの感覚」が失われるのも当たり前でしょう。 このような方向に人間の精神が進んでいくとすれば、人は自分の外側にあるものに共感し、それを理解し、愛することができなくなっていくでしょう。現代はまさしく、平和とは反対の方向へ向かっていると言えます。 ところが、今日参加してくださった生徒さんの学んでいる独立学園や、愛真高校や愛農高校はまさしく「センス・オブ・ワンダー」の教育を実践している。ネットやスマホがない暮らし(直接体験を重んじる暮らし)を通じて「驚きの感覚」を養っている。これこそ、平和の礎ではありませんか。いや、生命線ではありませんか。 ![]() |