プロフィール
●日本キリスト教団教会員から内村鑑三の書を読み無教会へ。「世俗と信仰」「政治と信仰」のテーマに関心をもち、一兵卒として市民運動、政治活動で知恵を絞り汗をかくよう努めている。
●長年企業勤務。その間、総監督として会社サッカーチームを天皇杯優勝に導き、ガンバ大阪を発足させ、現在も「黒幕」として大阪国際サッカースタジアムの建設に貢献。
●関西外国語大学で経営学、就職部を担当、現在も就・転職相談。
●執筆・講演・コンサルティング活動中。
2015年11月26日北星学園大学の田村学長と植村講師が記者会見し、学長が「同講師のソウルカトリック大学の招聘教授として赴任する」と述べ、同講師が「北星学園の尽力に感謝する」と述べました。カトリック大学の交換留学生が、植村講師の「国際交流」の講義に感動したことがきっかけになったようです。従いまして、全国集会で発題した内容の背景が変化しましたが、「この事件から見えたもの」は何ら変わっておらず、「無教会の信者として社会問題にどう対処することができるのか?」という観点からお読みいただきますと幸いです。そして、無教会の皆様がたが、この問題を心底憂いご支援くださったことに、心から感謝いたします。
「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことはできない。」(ヨハネによる福音書14-6)
1.事件の概要
北星学園大学(現在の大山綱夫理事長が無教会キリスト者)の非常勤講師である植村隆氏が、朝日新聞の記者だった1991年に、元慰安婦の証言を報じたことがある。それを一部マスコミが「慰安婦捏造」との記事を掲載した。それに前後して同大学に同氏の退職を求めて脅迫的な通信が殺到した。同大学は毅然として無視して、同講師を継続雇用していたが、上記のとおりの結末となった。
2.よかった点
同大学の姿勢が、広がった社会的支援を得て貫かれ、自由と平和を愛する人々に大きな勇気をもたらせた。入学志願者数が反って10%増加した。
3.問題点
①学内に学生の安全を求めて雇用継続に否定的な意見も多かった。②警備費(警備員増強、脅迫電話対応専門員配置、防犯カメラ設置など)が大幅に増加し、同大学の経営を圧迫した。③当初後難を恐れてかマスコミの報道がほとんどなかった(その後は変わったが)。
4.背景(見えてくるもの1)
(1)背景 ①大学の自治や学問・教育に対して圧力をかける。②リベラルなマスコミを委縮させ言論を統制する。③排外的民族主義を煽る。④日本人の罪性…犯罪意識の欠如…侵略や慰安婦問題について心からの謝罪をしない(その後2015年12月29日に安倍首相が初めて謝罪)。タテ支配…独裁に偏りやすい傾向、正義の不在…絶対神がない、やおよろずの価値観。
5.私たちは、いかにあるべきか(見えてくるもの2)
(1)聖書から本質を洞察する
「殺すな。人を殺した者は裁きを受ける。」(マタイによる福音書5-21)
「平和を実現する人々は幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。」(マタイによる福音書5-9)
「北星」「原発」「沖縄」の問題の全体像(安倍政治)を掴むと同時に、その本質を「義と愛」の問題として聖書に根ざして洞察しなければならない。その本質とは?――戦争・命の危険、弱者(苦しむもの)への愛の欠落。安倍政権の偽善、専横、狡猾。
(2)行動する
「わたしに向かって、「主よ、主よ」という者がみな、天の国に入るわけではない。私の天の父の御心を行うものだけが入るのである。」(マタイ7-21)
「人間の罪や社会の悪」から目をそらし行動しないことは許されない。「戦争を許し弱者を守れない」からである。
(3)力を頂く
恐れることはない、わたしはあなたと共にいる神。たじろぐな、私はあなたの神。勢いを与えてあなたを助け、わたしの救いの右の手であなたを支える。(イザヤ書40-10)
神と直接繋がる無教会キリスト者は、「1人の力では?」という無力感や、絶望感から解放されている。神が見てくださっているし、神の真理は必ず実現するからである。
実践付記
1.社会運動家にはならない
私は、北星学園事件や新安保(戦争)法制廃案について、一兵卒として行動したが、まず心しなければならなかったのは、聖書や信仰を離れた社会運動家にならないことだった。そのために、次の聖句が最も強く私を縛り付けそして解放してくれた。
「兄弟たちよ。世があなたたちを憎んでも、驚くには及ばない。わたしたちは、兄弟を愛しているので,死からいのちへ移ってきたことを、知っている。愛さないものは、死のうちにとどまっている。あなたがたが知っているとおり、すべて兄弟を憎むものは人殺しであり、人殺しはすべて、そのうちに永遠のいのちをとどめてはいない。主は、わたしたちのためにいのちを捨てて下さった。それによってわたしたちは愛ということを知った。それゆえに、わたしたちもまた、兄弟たちのためにいのちを捨てるべきである。世の富を持っていながら、兄弟が困っているのを見て、あわれみの心を閉じる者には、どうして神の愛が、彼のうちにあろうか。子たちよ。わたしたちは言葉や口先だけで愛するのでなく、行いと真実とをもって愛し合おうではないか。それによって、わたしたちが真理から出たものであることがわかる。そして神のみ前に心を安んじていよう。なぜなら、私たちの心に責められるようなことがあっても、神はわたしたちの心よりも大いなるかたであって、すべてをご存じだからである」(ヨハネ第一の手紙3:13-20)
2.自分だけが救われて安心することはなく、「殺人(戦争)に反対し」「弱い人を助ける」という無教会の伝統に生きる
「日本が交戦権を放棄し、軍備を廃した条項だけは、絶対的にこれを改めてはならない。…人類の歴史に未曽有な、世界万国に無比な、絶対平和国家の宣言である。この条項を失うとき、新日本の理想は地に墜ちるのである。それは神の啓示であり、神の国の理想の表明である。この理想を維持し、これを養うことに、日本国民の全努力を傾倒しなければならない」(1948年 矢内原忠雄 同全集 第17巻)
3.平和を守るための身近な行動例
○日本の政治についてよく知り、聖書に基づいて判断する。
○平和や差別、格差、脱原発を訴える市民集会に参加して学習し、腕を組む。
○知識を得たら身近な無関心の人を啓蒙する(家族、友達、職場…)。
○集団活動に参加する。デモ、署名、カンパ…
○日本にたくさん居住(滞在)する韓国人や中国人の方が居たら話しかけ仲良くする。そんな中で、小さいながらも「村山談話」「河野談話」の内容を話すことはできる。
○地元の政党に近づいて議員に働きかける。
○政府の干渉にたじろいでいるマスコミの言論状況を憂うならハガキや手紙、電話やメールで反応する。
○軒先、自転車、衣服などで「平和」の意思表示をする。
○身近な弱い人、困っている人たちに寄り添う。ボランティア活動も。
○社会活動をしても、常に聖書と人間の問題に戻る。
以上